クロス貼替えや床工事、建具交換などの内装リフォームとは異なり、水廻りの改装ではその工程においても設備工事が中心になります。この事が一番の理由で、単純に作業業種が多くなり、職人の頭数が必要になり見積も複雑で解りにくくなります。
既存設備機器、間仕切りの解体
大工が解体する事もある
キッチン下地・間仕切り造作
既存配管撤去/新設配管仕込み
既存配線撤去/新設配線仕込み
既存配管撤去/新設配管仕込み
キッチンパネル施工 [大工工事が一般的]
組立専門業者が施工 [保証関係でメーカー施工]
仕上げの配管接続
クロス・CFの施工/フローリングの場合は床先行
新規のガス器具に接続
配線仕上げ・器具取り付け/コンセント、スイッチカバー
建具工事、フローリング貼り、
レベル調整、解体工事、木幅木取付け
クロス、CF、フロアタイル、絨毯、ソフト幅木
コンセント、シーリングの移動・新設
TV受信設備やネット回線の整備や移設
上記のように、内装工事に比べ狭い空間に工程上必要な業者が入り乱れます。電気、水道、ガスなどの設備工事の職人は完成まで最低2回現場に足を運ぶ事になります。 これは、どのような販売体制であるかに係わらず、上記の工程・工種は同じです。
工務店側においては、他の現場も考慮し工程を細かく設定する事で、工数は減りませんが人工は減らす事ができます。工程の計画時に二度手間の発生が無いようにするため、内装の仕様はお客様が確定する必要があります。
電気、水道、ガス全て施工可能な「設備会社/職人」と言うのは基本的に存在しません。しかし同時期の施工件数を多く持つ事で、各現場の工事を分散させて1日の仕事量を有効に確保する事はでき、1件当たりの単価が安くなります。
余計な追加工事が発生しないようにする事と、最終的な納まりを確実に決めておく事で施工時間の短縮に繋がり、またミスも少なくなります。これは優秀な監督が存在してはじめて実現します。
キッチンの入れ替え工事の場合、総支払い額の50%以上が工事費になる場合があります。このため、キッチン本体が何%の値引きであるという事は、本質的にはあまり意味がありません。工事費込みの総支払い額が全てです。
新聞チラシに掲載される格安システムキッチンは、最低限の仕様の場合がほとんどです。 以下はパナソニックのシステムキッチンの仕様例です。仕様ーAが基本にチラシ仕様になっている場合が多いです。この場合ほぼ100%食器洗い乾燥機などは付いていません。基本的にチラシの画像は豪華に見えるように撮影されているので特に注意が必要です。
仕様ーA
チラシのグレード
仕様ーB
人気のグレード
換気方式
プロペラ
換気方式
シロッコファン
ステンレスカウンター
人造大理石カウンター
固定水栓金具
引出し式ハンドシャワー
無し
有り
W-2100mm
W-2550mm
上記は、左右共にパナソニックのリビングステーションSクラスのカタログからの写真です。チラシで品番などが提示されていても、お客様が必要なオプションを追加していく内に価格は変動します。
キッチンパネルの施工や扉柄のグレードアップまでを考慮し、価格の総額として種類別にパターン化されて掲載される良心的なチラシは、ほとんど見たことがありません。
扉柄の最上級グレードと最低グレードの差でキッチン本体がもう一つ購入できるくらいの価格差が生じます。
W−2550のキッチンでキッチンパネルを冷蔵庫の裏まで貼った場合のおおよその価格を考えてみます。ほとんどの場合キッチンの端部分から冷蔵庫の裏まで回り込ませた施工になります。
キッチンを新調した場合、納まりを良くするため既存のタイル部分にはキッチンパネルを貼ります。下記がメーカー価格と写真がメーカー推奨のキッチンパネルセットです。本体の他、コーキングや見切り材、両面テープが施工材です。
7,350円×2セット=14,700円
(1セット2枚入り)
1セット31,900円×3セット=93,970円
この金額を無料にする工務店はありません。安くて12,000円
この金額を50%引きにしてくれる工務店は私共を含めほぼ無いと言えます。キッチンパネルの施工ですべてメーカー純正の材料を使う場合は半額にすると工務店はこのカテゴリーでは完全に赤字になります。
私のお客様は上記の内、平均4点をオプションとして複数追加されています。 このように通常必要なキッチンパネルと、平均的な追加オプションを定価ベースで算出すると、おおよそですが、チラシ価格より30万円ほど高くなる計算になります。
「でも、半額なら15万円のUPじゃないの?」
いいえ、違います
一つの例でしたが「純正のキッチンパネルが半額以下になるか?」施工業者に問い合わせて下さい。そもそも見積りに入っていてもホームセンターで仕入している可能性もあります。また、食洗器などを追加すると、水道の往き戻り管の接続工事費、電気工事費も必要となり、設備費工事費としても追加されます。
その他、ガスコンロをIHに変更した場合、200Vの電源の引き込み工事も発生する事になります。古い住宅の場合で引込み線が2線100Vの場合、柱上変圧器から自宅に3線200Vを引き込む必要も出てきます。
(この工事はブレーカの取替えを含め10万円を軽く超えます。)
一番問題なのは、本体が50%の値引き表示が提示されていても、オプション品などで、お客様が追加、変更する可能性の高い商品は、本体と同じ値引き率になっていない場合が多いと言う事です。このような事が最終見積もりが高く感じる理由の一つであり、50%引きチラシのカラクリです。
(販売店の売りやすい商品を、売り付けられる事があるため。)
(わからない項目はチェックしておく)
結構みなさん、車を購入するときには、カタログを隅々まで読んで、オプション品など、どれを付けるか悩み、色々なディーラーを回り、試乗もし、値引き交渉もされると思います。キッチンも高価な商品ですから、その感覚になって欲しいと思います。
また車と同じように、後からでも取り付け可能なオプションや、メーカー品でなく、ホームセンターなどの汎用のもので間に合うオプションもあります。